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  • 執筆者の写真平野 洋平

医学教育トランスフォーメーションへの挑戦②

更新日:2023年2月21日


 前回のブログで、現在の医学教育における課題と現状について考察しました。

  • 医学生は、自らを主体とした患者診療プロセスを経験できない環境にいる(=試合のできない医学生)

  • 効率の良い学習のためのアウトプット型の教育、アクティブラーニングを政府も教える側(医学部附属大学)も推進している。

  • 医師の指導監督の下で今後医学生が医業を行うことができるという医師法改正が今年(令和5年)にある。

  • しかし、実際の現場では医療安全に対する懸念や、教育者の多忙など、ルール改正のみでは簡単には変わらないであろう課題も残る。

以上のようなことを話してきました。


 医学に限らず、プログラミング学習や英語学習でも、動画や本ばかりみて学習しても、いざ実際の場面では何もできず辛い思いをすることになります。知識や技術があっても、生の現場での「使い方」がわからないからです。教育で大切なのは、学びを得た学習者が実際の場面で活躍できることです。そのためには実際のプロジェクトであったり、自分ごととして学習を進めていくことが重要です。

 このような意義のある教育を、医療という特殊な課題を持った分野にどう落とし込んでいくか。私(そして弊社)が導き出した答えは、『アプリケーションを使用することで、学生が自分ごとで疑似診療体験をできる医学教育プラットフォームを創造する」というものです。


アプリを利用した疑似診療体験プラットフォーム


 患者の診断や鑑別を考えながら(臨床推論)、問診、診察、検査を正しく選択して、治療を決断していくのが実際の診療プラクティスです。そして、選択した治療に対して患者は症状、検査結果などの反応を返し、それに対してまた医師は何らかの判断をして治療を選択していく。この過程をアプリ上で疑似診療体験として再現したいと思っています。全ての決断を学生が選択することができることが重要です。もちろん初学者ですのでわからないことも多く、アプリ上で学生は自身の選択した診療や治療の失敗を多く経験するでしょう。しかし、自分で診療をデザインするという経験や、アプリ上での診療失敗体験は、実際に医療現場で役立つ能力を育てることに繋がります。また、知識のインプットの効率も大きく高めてくれることでしょう。他の学生がどのような診療をしたかを共有したり、自身の思考過程を皆に伝えることも良いと思います。このようなアクティブラーニングは学習効率が高いことは知られており、本当の意味で医療現場で活躍する医師になるための教育には一番重要なことであると思っています。


疑似診療体験プラットフォームのメリット


もし、実際の医療現場のオペレーションを模倣した環境をアプリ上で再現することができたらどのようなメリットがあるでしょうか。


1: 安全

 学生が実際の患者診療を行うことなく、安全に疑似的な症例体験を積むことが可能となります。疑似症例で診療の失敗をしたとしても、それはアプリ上なので問題ありません。実際の医療現場では決して許されないことです。

2: 教育者の負担軽減

 PBL(Project Based Leaning)では、多くの教育者を必要とすることが課題ですが、動画などで一定のフィードバックをする仕組みをアプリ上で内包できれば、いつでもどこでも学生は自主的に学習とフィードバックを受けることができるようになります。学生の基礎能力が上がった上で、より深いフィードバックを与えることは、教育者の負担の軽減に大きく貢献します。

3: 学習効率の向上

 前述のように、アクティブラーニングは学習効率が高いことが知られています。

4: 医師の過重労働の軽減

 本プラットフォームで学習した学生が医師となった際には、医療現場のプラクティスに関して鍛えられていることになります。そのため指導する医師の立場からすると、今以上に仕事の安心した分散が可能となり、全体としての労働負荷は減ることになります。学生の現場能力の向上は、いまの研修医がこれまで以上に上級医らしくなる必要性を求めることにも繋がります。さらに上級医は、研究や教育に割く時間を増やすことができるようになるなど、医療現場を取り巻く環境全てに好循環が生まれてくることを期待しています。

5: 学生のモチベーションアップ

 実際の医師に近い経験を学生でできることは、将来の医師としての自覚の芽生えやモチベーションの向上につながりやすいと考えています。


疑似診療体験プラットフォームの注意点

 メリットの多い疑似診療体験プラットフォームですが、利用するにあたり大切なことがあります。それは、アプリだけでは決して教育は完結しないという点です。学生への教育フィードバックの最後の締めの部分は、現場の担当教育者であることが理想的であり、アプリ上では再現できない部分やプロフェッショナリズムについてなど、現場の教育者が自身の経験をもって伝えていくことがとても大切だと思っています。


まとめ

 今は存在していない、医学生がいつでもどこでも疑似的に診療体験ができる環境(プラットフォーム)の提供を弊社は目指しております。そして現場の教育者が、プロフェッショナルとして経験に基づいたリアルなフィードバックをする。医師になるための最終試験である医師国家試験でも弊社のプラットフォームのような実際の診療に近い体験をしてもらう中で、医師の資質を問うカタチ。これが弊社の目指している医学教育の未来、医学教育トランスフォーメーションです。

 しかし、この未来の実現は決して簡単なものではないでしょう。医学教育に関わっている多くの方のサポートがなければ決して叶うことはありません。「一緒に医学教育現場のイノベーションを実現したい」と、弊社の取り組みに賛同してくださる方は、ぜひご遠慮なく連絡いただけますと、とても嬉しいです。


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